リウマチ科関節リウマチ
概要
関節リウマチは全国に約70-100万人の患者さんが存在し、膠原病の中では最も多い病気です。原因不明の病気ですが, 免疫の異常 (自己免疫性疾患)によって関節に炎症を起こし、全身の関節に腫れや痛みが現れます. 次第に骨破壊や関節の変形が進行し, 就業や趣味などの生活の質を損なう原因となります。近年、関節リウマチは発症後の2年間に急速に骨破壊が進行することがわかり、発症早期からの積極的な薬物療法が行われるようになりました。メトトレキサートを中心とした抗リウマチ剤、さらには生物学的製剤などリウマチの薬物療法は、より効果的でより安全なものへと急速に進歩しています。
当科においては従来の抗リウマチ薬やステロイド、生物学的製剤、非ステロイド系抗炎症薬を使用し、それぞれの薬をうまく利用することにより、病気の改善・寛解を目指しています。
症状
主な症状は, 関節の痛み、腫脹、朝のこわばりです。手足の指関節を中心に多関節に症状が現れることが多いですが、高齢になるにつれて, 肩, 肘, 膝などの大きな関節のみ症状が現れることもあります。 関節の腫れは, 変形性関節症でみられるような「ゴツゴツ」とした腫れとは異なり、紡錘状の「ブヨブヨ」とした腫れを認めます。病気が進みにつれて、「ボタン穴変形」「スワンネック変形」と呼ばれる関節の変形が現れます。
検査
- 炎症反応 (CRP、赤沈)
- リウマトイド因子、抗CCP抗体 (ACPA; anti-citrullinated protein antibodies)
- 骨びらん (X線)
- 肝機能、腎機能、貧血、脂質、糖尿病、検尿などの一般的検査
- 感染症 (結核, 肝炎ウイルスなど) のスクリーニング
- 胸部X線検査
関節リウマチの診断, 活動性の評価を行うために関節の理学的所見に加え、血液検査、関節X線検査を行うことが重要です。血液検査では、関節の炎症の程度を表す炎症反応、また免疫学的異常を表すリウマトイド因子、抗CCP抗体 (ACPA)を測定します。また、「骨びらん」と呼ばれる虫歯のような骨破壊増が、関節X線に認めることがあります。
また, 関節リウマチの治療を開始する前には, 肝機能, 腎機能などの一般的な検査, 感染症のスクリーニング, 胸部X線検査は必要です. また. 治療開始後もお薬の副作用のモニタリングのため定期的に同検査を行う必要があります。
診断
以前は1987年に米国リウマチ学会が提唱した診断基準を用いていましたが、特異的な検査である抗CCP抗体測定の普及、また早期診断の重要性のために現代では2010年に米国リウマチ学会/ 欧州リウマチ学会の提唱した新分類基準を用い診断されています。
治療
発症早期、特に早期の2~3年に急激な関節破壊の進行が認められることが知られるようになり、より積極的にメトトレキサートを中心とした抗リウマチ薬、ステロイド、また効果不充分例に対し生物学的製剤を用いて治療が行われています。
抗リウマチ薬とは
免疫を調整・抑制することによりリウマチの進行を抑えるお薬です。メトトレキサート(リウマトレックスⓇ)は世界的に基本となっている治療法です。副作用として、間質性肺炎や肝障害・感染に気を付ける必要があります。そのほか、サラゾスルファピリジン(アザルフィジンⓇ)やブシラミン(リマチルⓇ)、タクロリムス(プログラフⓇ)などがあります。
ステロイドとは
主に急性の痛みをとるときに用います。免疫を抑えることにより関節の炎症を抑え、痛みを軽くします。長期内服により感染症や骨粗鬆症、胃潰瘍、糖尿病などのリスクがあがります。使用する際は副作用予防のためのお薬も飲んでいただきます
非ステロイド系抗炎症薬と
発熱・痛み物質であるプロスタグランジンの産生を抑制することで痛みをとります。副作用として胃潰瘍や腎障害に気を付ける必要があります。
生物学的製剤とは
関節リウマチの炎症にかかわる分子をピンポイントで阻害することにより、効率よく炎症を抑え、副作用を軽減できるお薬です。
従来の抗リウマチ薬と比べ、➀ 効果発現が早く、➁ 関節の疼痛や腫脹などの症状を強く緩和し、➂ 骨破壊の進行を抑え、変形などの関節破壊を抑制ます。また➃ 多くの患者さん に有効であるなどの特徴があります。そのため、かつて多くの患者さんに投与されていたステロイド剤や消炎鎮痛剤の減量が行うことが可能になり、これらの副作用の軽減も図れるようになりました。
新しいお薬であり、悪性腫瘍や自己免疫疾患の誘発など長期の安全性が確立されていないことや、製剤が高価であることなどの問題があります。